12月21日

チーム・バチスタの栄光

 「チーム・バチスタの栄光」というミステリー医療小説がある。作者は海堂尊(かいどうたける)という現役の医師で、平成17年(2005)の第4回「このミステリーはすごい!」大賞を取った作品である。受賞時のタイトルは「チーム・バチスタの崩壊」だった。入院の退屈しのぎに読んだらと、娘がBOOK OFFで買ってきた。著者は、架空の都市・桜宮市にある東城大学医学付属病院という病院を設定し、現役の医者としての専門知識を駆使して、その架空病院を舞台にバチスタ手術の現場を臨場感と緊張感をもって描いている。しかも手術室という密室で殺人が行われるというスリリングな展開は、近年にない出色のミステリー医療小説であり、一気に読破した。

海堂尊(かいどうたける)著「チーム・バチスタの栄光」
海堂 尊著「チーム・バチスタの栄光」(宝島者文庫)
 バチスタ手術とは、拡張型心筋症に対する手術術式の一つで、肥大した心臓を切り取って小さく整形し心臓の収縮機能を回復させるもので、正式には左心室縮小形成術のことである。しかし、創始者であるR.バチスタ博士の名前を取り、バチスタ術という俗称の方が広く知られている。

 チーム・バチスタとは、東城大に招聘された心臓外科の桐生助教授が結成した専門チームで、リスクの高いこの手術を次々と成功を収めていく。しかし、途中で3例立て続きに術中死を引き起こし、それが医療過誤か殺人かの内部調査を、高階病院長は神経内科学教室の万年講師で「不定愁訴外来(別名・愚痴外来)」の責任者・田口公平に命じる。物語の後半は、厚生労働省大臣官房秘書課付技官でロジカル・モンスターとか火喰い鳥などとあだ名される白鳥圭輔が加わり、スリリングな展開を見せる。

 この小説は、単に推理小説というだけでなく、崩壊寸前の大学病院の現状や医療現場の危機的状況など現代医療が抱える今日的問題も告発している。2007年に映画化されることになり、その年の1月に竣工したばかりの埼玉医大国際医療センターの施設が主なロケ地として使われた。映画では田口公平が田口公子に変わり、竹内結子が演じ、白鳥圭輔を 阿部寛が演じている。

 本日の朝の回診の時、病院長が声をかけてくれた。 「オウセイサン、明日はバチスタ病院へ入院することができてよかったですね」
だが、埼玉医大国際医療センターの心臓病センターでは動脈瘤の除去、バイパス手術、心臓移植を手がけているが、バチスタ手術は行っていない。したがって、原作のようなチーム・バチスタも存在しない。映画のロケ地として竣工間もない病院施設が使われたことで、バチスタ病院と呼ばれることもあるのであろう。

 夕方、背丈のある看護師がベットに近づいて来ると、ヌウッと右手を差し出し「オウセイサン」と独特の節回しで声をかけてきた。
「残念なから明日は非番で病院には来ません。手術が成功したら、また元気な姿を見せて下さい」
「どうもありがとう」と、小生は彼女の手を握りかえした。暖かく柔らかな手だった。



次へ 前へ