1月12日

癌患者のニックネームターナンさんの天使の歌声

 病院でも終末はリハビリセンターが休みである。何をして時間をつぶそうかと思っていると、本日の午後2時から30分、この病院の癌患者でニックネームをターナンという女性が、エントランスホールで仲間と新春ライブを開くと聞いた。A氏を誘うと、かれも時間を持てあましていたのか、一緒についてきた。

ターナンさんと仲間達
ターナンさんと仲間達
 午後2時になると、エントランスホールにコーラスグループの仲間が並んだ。いずれも素人だが、ターナンさんが何かのクルーズで船内で歌ったとき知り合った仲間だそうだ。ターナンさんがこの病院で新春のライブを開くと聞いて駆けつけてくれたとのことだ。バックの合唱グループはそれほど上手いとは思わなかったが、メインボーカルのターナンさんの歌声だけはさすがだった。

 彼女は二年まえに腸の癌を発病しあちこちに転移したため、何回も手術を繰り返してきたが、最後は脳に転移し手術不能となったことを、歌の合間に告白した。最近はコバルト照射も断念し、自分の好きな音楽で前向きに生きることで免疫力を高め、内なる敵と戦って余命を1日でも伸ばしたいと言う。

ソロで歌うターナンさん
ソロで歌うターナンさん
 いずれ名のある音楽校の声楽部で学んだのだろうが、その声は実に美しく清らかで天使の歌声のようだった。三部構成で第一部は童謡唱歌/埴生の宿・菩提樹・赤い靴・星の界・冬の星座、第二部はギターと唄/三匹の蜂・バラが咲いた・神田川・荒城の月、第三部ソロ/芭蕉布・アベマリアというプログラムになっていた。

 第三部は、娘さんのピアノ伴奏で、細く良く通る声で芭蕉布とアベマリアを歌った。もはや余命幾ばくもない歌手が、最後の最後まで好きな歌を歌って生きようとする姿は見る者の涙を誘った。



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